家族が外出時に段差で足をくじいてしまい、足部の靭帯断裂の診断を受け初めてのギプス固定・松葉杖生活が始まりました。
私はリハビリ職員をしており整形外科で足の骨折をされた患者さんを何度かリハビリで見ていたので、病院での生活は知っていたんです。
しかし、初めて自宅での生活を目の当たりにしてギプスや松葉杖での生活の大変さを改めて実感しました・・・
松葉杖を使った歩き方や階段昇降などの知識はあっても、実際に床での生活、狭い室内、お風呂や買い物の不自由さ、また毎日松葉杖を使うため脇や手のひらが痛い・・・など体験して初めて問題が見えてきました!
今回は、初めて松葉杖を使用することになった時の松葉杖の使用法や脇痛い時の痛みが出ないような対処法、初日から用意しておくと良いものなどをまとめています。
この記事が私や家族以外の誰かの参考になると幸いです。
- 初めて松葉杖を使用する時の知識(高さ調節・歩行方法・階段昇降の方法)
- 松葉杖を使用する時、脇や手ひらの痛みを防ぐ方法
- 松葉杖生活の注意点や用意しておくと良いもの
はじめに、初めての松葉杖使用までの経緯
はじめに、家族の松葉杖生活になった経緯を載せておきます。
松葉杖生活を送る人と照らし合わせて同じような部位のケガの場合、その後も対処法など参考にして下さい。
当事者は30代、男性、左足の靭帯断裂により、足をくじいた2日後からギプスを巻き、松葉杖を使用開始しています。
●けがをした当日:
土曜日の午後、外出先の段差につまずき、勢いよく左足を捻じる。
捻じった直後は、痛みが強くなかなか一人では立ち上がれず。
その後、かろうじて左足首は動き自力で立ち上がることができたため、支えながら歩き自宅へ帰る。
自宅では体重を乗せると左足が痛むため、足を少し上げた状態で冷やして安静にして土曜・日曜日は様子を見る。
●自宅内にて:
左足に体重をのせられない状態だったため、趣味の登山で使用している登山用のスティック(1本または2本)を杖変わりに使用して自宅内を移動。
【 ⇩ 床を汚さないよう、傷めないようにスティックの底は布で覆う】
また、けがをして急性期なので、入浴・シャワーも避けてひたすら冷やすことを継続。
(洗髪は洗面台で、身体はボディーシートで拭く対応)
ケガをした直後(2~3日間)は急性期と呼ばれ、炎症を抑えることが優先される時期です。
必要な応急処置として『RICE処置』を行います。
- Rest(安静):患部の固定、安静
- Icing(冷却):患部を氷や氷水で冷やす
- Compression(圧迫):きつすぎないように圧迫
- Elevation(挙上):心臓よりも患部を挙げる
●月曜日の朝整形外科へ受診:
徐々に内出血や腫れもみられたため、月曜日の朝一で整形外科へ受診。
『左の前距腓靭帯の断裂』(参考にて解説⇩)にて左下腿から足先までをギプス固定、病院から松葉杖を借りての生活となる。
足をくじいた時に足関節の外側に付着している前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)は、損傷する頻度が高く、慢性化する場合が多いので注意が必要です。
受診時は、「安静期間6週間、2週間はギプス固定」との診断結果を受ける。
●その後の経過:
2週間のギプス固定が終了したらサポーターでの足首固定に変わりましたが、体重をかけることは問題ないので松葉杖は返却しました。
全治は半年程度かかると言われていましたが、4か月までサポーター使用し、ハイキングも3か月目にはできるようになっていました!
【松葉杖のレンタル料金について】
今回、松葉杖は病院からレンタルするという形でした。
無料で貸し出しされる場合もあるかもしれませんが、受信先の病院では預かり金として5000円の前払いをし、1日50円のレンタル料金で松葉杖を返却する際に差し引き金額を返却する、という仕組みでした。
一応体力のある男性なので、松葉杖を使用できる腕の力は十分あり、最悪片足のケンケンで移動することもでき、左足なのでギプス固定後も車の運転はできる状態でした。
もし一人でけがをしていた場合、当日は一人で歩けなかったのですぐに救急車などを呼ぶ必要があったかもしれません・・・
また、右足であれば車の運転もできないため、その場合は通勤手段の変更も必要でした。
このような経験を含め、実際に初めて松葉杖を使用する時に知っておいて欲しいことを解説していきますね。
初めて松葉杖を使用する時に知っておくこと
まずは病院などで松葉杖を初めて処方された時に、まず確認することをご紹介します。
万が一、対応する職員が忘れていたら困るのでしっかりと聞いて確認していきましょう!
●松葉杖の高さ調節を行う
●松葉杖での歩行方法・階段の上り下りの仕方を確認しておく
●松葉杖を使用する際の松葉杖のチェックと、脇を圧迫しないように気をつける!
それぞれの確認事項について解説していきますね。
◇松葉杖の高さ調節
その場で松葉杖の高さを調整してくれると思いますが、松葉杖の高さ調節は重要ですよ。
長時間歩く時などの疲労感やバランス、脇に当たっていると脇の痛みなども出てくるので、現場でしっかりと松葉杖の高さを確認しておく必要があります!
●松葉杖の先を、足先斜め前方約15cmの位置についた時、わき当てと脇の間に2~3横指のすき間があり、その時に肘が約30度曲がるくらいにする。
●握りの高さは、床から大転子か橈骨茎状突起の高さになります。
※大転子(だいてんし):太ももの骨の一番上外側にあるでっぱっている部分
※橈骨茎状突起(とうこつけいじょうとっき):手首の親指側ででっぱっている部分
図で見るとこんな感じです。
【不適当な場合】
●長すぎる時:肩が上がり、床に押し付ける力が弱くなる。
また、脇を圧迫してしまい、腋窩・橈骨神経麻痺を起こす可能性がある。
●短すぎる時:脇で固定する力が弱くなり、歩行が不安定になる。体も前に傾きやすく、姿勢が悪くなる。
◇松葉杖での安全な歩行方法
受傷した足を接地できるかどうか(骨折などで体重をかけて良いかダメか)で歩きやすさは違ってきます。
足に荷重をかける程度や松葉杖を片側で持つのか両側で持つのかでも歩行方法が違うので、しっかりとその場で指導を受けて下さいね。
荷重制限や歩行方法を聞いた後は、松葉杖の高さが合っているか再度確認もしておきましょう!
◇松葉杖での安全な段差、階段の上り下りの仕方
低い段差でも松葉杖ではバランスを崩しやすいので注意が必要です。
階段は、始めは怖いと思いますので、しっかりとやり方を確認しておこなってください。
こちらも足に荷重をかける、かけないの違いがありますが基本的な階段の上り下りと松葉杖を使用した時の方法をご紹介します。
<松葉杖を使用した階段の上り下り>
●上り:良い方の足から上り ➡ 松葉杖(と悪い足)の順番で1段づつ昇る。
●下り:松葉杖(と悪い足)から降ろし ➡ 良い方の足の順番で1段づつ降りる。
※特に下りは患側を先に出さないと、後方の段に引っかかる心配があるのでご注意を!
また階段の上り下りの時に、両方の松葉杖が上の段にこないように気をつけて下さい!
松葉杖が上の段差に来ると、脇が持ち上がり、バランスを崩しやすくなります。
【 ⇩ IMSグループリハビリ部門の「医療・介護お役立ちサイト」より】
患側に体重をかけない場合の松葉杖での階段の上り下りの動画です。
分かりやすいので参考にしてみてくださいね。
階段の上り下りの時に介助者がいる場合は、上り下りとも常に本人よりも下に位置すると、バランスを崩した時に支えやすいですよ。
◇松葉杖を使用する時に大事なこと!
(脇や手のひらに痛みが出ないように再度確認を!)
① 松葉杖は、脇で支えてはいけません!
脇の下には、リンパや血管、神経などが通っています。
脇を圧迫すると麻痺などを起こす可能性もありとても危険なので、松葉杖は手で支えて脇の下は少し空けておきます!
(脇の下に2~3本指が入るのが目安)
② 松葉杖の長さ調節と共に、松葉杖のねじのゆるみをみておきましょう!
歩行中や松葉杖を落下させた時に「カシャカシャ」と乾いた音がする時はネジがゆるんでいるので締め直す必要がありますよ。
③ 杖先のゴムの破損のチェックなども忘れずに見ておきましょう。
松葉杖の先のゴムがはがれていると滑りやすくなります!
※参考文献:富士武史,河村廣幸,小柳磨毅,淵岡聡(2006.11.20)『ここがポイント!整形外科疾患の理学療法』金原出版株式会社
では次は、松葉杖で移動する時の注意点について紹介していきますね。
松葉杖で移動する時の注意点
実際に初めて松葉杖で移動する時は、いくつかの注意点があります。
安全のために、こちらを覚えておいてくださいね。
●屋外の広い所では移動しやすいが、狭い場所では移動がしにくい。
●屋外でのちょっとした段差でもつまずきやすく、バランスを崩しやすい事を知っておく。
●階段昇降は練習をしておかないと初めての場合は難しい!
(いきなり外出先で試みることは危ないですよ!)
●手動での扉の開け閉めが困難、扉に挟まらないよう、バランスを崩さないよう注意。
●雨の日は地面がすべりやすく注意が必要。
(もちろん傘ではなくカッパを着ないといけない)
【 松葉杖での転倒リスク高い行為 】
- 片手での荷物の持ち運び
- 狭い所での方向転換
- 車の乗り降り
- 扉の開閉時
- 雨の屋外など
松葉杖を持った状態で転倒すると、とっさに手が出ないため危険です!
再度のケガにもつながりかねないため、転倒しないように気をつけて下さいね。
これらの点に注意して松葉杖の移動を行ってくださいね。
では、松葉杖を長時間使用することで脇痛いとか、手のひらが痛いなど痛みが出てくる場合がありますので、その対処法を解説していきます。
松葉杖で脇や手のひらが痛い時の対処法
【 ⇧ ハンドタオルと包帯を巻いた松葉杖】
長時間、松葉杖を使用することで、脇の下や手首、親指の付け根部分など手のひらが当たる部分に痛みが生じる場合があります。
そんな時は、脇当てと持ち手の部分にハンドタオルを巻いたり・包帯などを巻いて体に当たる部分をを柔らかくして対応すると痛みが軽減できますよ。
ただし握り部分は滑らないように注意が必要です!
あまりに太く巻きすぎてしっかりと握ることができないと、階段の上り下りの時に手が滑ってしまって危ないです。
手のひらに当たる面が多くなり、握りにくくならないように調整して巻いてください。
(タオルの上に包帯で量を調整するとやりやすいです)
さらに、松葉杖生活の注意点や初めから用意しておくといいものを紹介していきますね。
その他、松葉杖生活の注意点・用意しておくと良いもの
それでは次に松葉杖生活になった時に用意しておくといいものや注意点について解説していきますね。
●松葉杖での買い物などは荷物が持てないので、リュックや肩掛けの鞄が基本
➡ 財布やスマホなどすぐに必要なものは肩掛けの方が便利
●靴の履き替えが立ったままでは危ない ➡ 椅子に座っておこなう
●ズボンの着替えなども立った状態では難しい ➡ 椅子を使いながらおこなう
こたつ、畳生活で家に椅子がない場合、持ち運び・折りたたみができる椅子を持っていると便利だと感じました!
●お風呂でも椅子は必要になりますが、低すぎると立ちにくいので座面は高めのものが良いです。
▼屋内での移動手段に松葉杖は広いスペースが必要です。
うちの場合、自宅内は登山用のスティックを継続して使用することにしました。
(足への荷重は多少OKなので)
▼部屋の床には物をおかず、コードなど引っかからないように配慮したり、床でのちゃぶ台生活を、ソファーとテーブルを使用した椅子生活へ変更しました。
▼玄関での靴の着脱時は腰掛けられる椅子を用意すると一人でも靴の着脱が可能です。
(ギプス側はベルトつきのスリッパで屋外でも汚れないようにしていました)
▼お風呂では洗体用の椅子を使用していたため、座ってシャワーでの対応をしていました。
松葉杖で脇痛い!対処法や使い方・階段昇降を専門家が解説!のまとめ
初めて松葉杖を使用する時には知っておくこと、注意することがたくさんありました。
- 松葉杖の高さ調節を行う
- 松葉杖での歩行方法・階段の上り下りの仕方を確認しておく
- 松葉杖を使用する際の松葉杖のチェックと、脇を圧迫しないよう気をつける!
- 荷物の持ち運びはリュックや肩掛けの鞄
- 椅子を利用し靴やズボンの脱ぎはきを行う
- 松葉杖で当たる部分、脇や手のひらをクッションで保護する
- 転倒リスクのある行為に注意する
長時間松葉杖を使用していると脇痛いとか手のひらが痛いなどの痛みも出てくるので、タオルや包帯などでクッションを作ってみてくださいね。
病院の職員は残念ながら、患者さんの自宅内での生活までは想像ができていないことを実感しました!
なので、もし生活上困ったことがあれば遠慮せず病院の先生や職員に相談した方が良いと思いますよ!
この場合はどうすればいいか?過去の経験からアドバイスをいただけることも多いと思います。
ケガの痛みだけでなく、松葉杖を使用する時は使い方をしっかりと守り、脇や手ひらの痛みなどに対処しながら安全に生活をして下さいね!
みなさんもケガや事故にはくれぐれも注意して下さい!